第1章 affettuoso(アフェットゥオーゾ)
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初めては痛いって言うし、きっと怖いだろうから。
「中で出さなきゃ大丈夫だよ」って、頭の片隅でもう一人のズルイ俺が囁くけど。
そんな悪魔の囁きになんて耳を貸さない。
はぁ…とため息をつきつつ、この前の休みに出先の喫茶店でいい歌詞を思いついて走り書きして置いたメモを探すべく。
バックの中を漁って探しているけど見つからない。
「あれ?おっかしいなぁ…確かにこのバックの中にあるハズなんだけど」
このままじゃ埒が明かないとばかりに、仕方なくバックの中身を全部床にぶちまける。
「手伝いますか?」
「ううん、大丈夫。ゴメンね?俺のバックの中、なんかごちゃごちゃでさ」
えへへ…って笑って少しでも雰囲気を和まそうと頑張ってみるものの。
やっぱりどうしても空気が重い。
それもこれも、おまえが見当たらないから悪いんだ!
と手にしたゴムを投げたく………って、えぇっ!?
あったよ、ここに!
そう、枕の下には見当たらなかったのに。
バックの中から現れたソイツ。
これは街中で配られてたのをたまたま貰ったのかも知れない。
「なんですか?それ」
今度はマズイ事にしっかり手に持ってるそれをの視線が捉えた。
これを使う事は良い事なハズなのに。