ときめきメモリアルGirl's Side【佐伯瑛】裏
第1章 夢の隣に
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本当はじいちゃんは居ないのに。
困ったように紡がれる言葉が声が可愛くて。
ちょっとだけ意地悪したくなる。
「…ったく。仕方ない」
腕の中のおまえの向きをクルリと変えて向かい合う。
熱を帯びた頬が赤く、虚ろな瞳に俺の熱が上がりそうだ。
どうしてそんな顔するんだよ?
優しくしてやりたいのに。
それじゃ加減出来なくなるだろう?
「なぁ、。口開けて?」
「えっ?何するの?」
不思議そうに俺を見上げる表情に胸が高鳴る。
いつも一番近くに居るのに。
もう随分一緒に居るのに。
時折見せられる俺の知らない表情に、今まで何度ドキドキさせられただろう。
だから思うんだ。
そんな顔は俺に、俺だけにしか見せないで欲しいって。
「いいから、口開けて」
「うーっ、だから…何で?」
結構頑固なんだよなぁ、おまえって。
でも、そんな所も可愛くて仕方ない俺は、相当おまえが好きなのかも知れない。
勝ち負けで言ったら、この勝負きっと俺の負け。
でも、こんな負けならいいかもなんて思ってしまう。
「声、我慢出来ないんだろ?」
訊ねる俺に黙って頷く。
「なら、口開けて」
「でも…」
「キス…するんだよ」
唇が触れるだけのキスなら、もう何度もした。
だからもっと…。
「何でキスするのに口開けるの?」