ふたりで紡ぐ魔法の呪文/ワンド・オブ・フォーチュン【エスト】
第1章 第一章
僕では、あなたを卒業へと導くことすら出来ないのだから。
無属性と言う稀有な存在のあなた。
それ故に魔法が定まらず、何をやっても失敗する。
それでも彼女は魔法が好きだと言う。
そうして憧れの祖母のようになりたい!と、不安定な魔法をなんとかすべく、このミルス・クレアへとやってきた少女。
彼女はミルス・クレアの守護役である古代種の双子が決めた期間内に、最終試験に合格して属性を手に入れなければならない。
その最終試験には、パートナーが必要だと言う。
パートナーなしでは越えられない試験。
けれど僕にはそれが出来ない。
古代種の双子に排除されるべき存在の僕を選んだら、彼女がどんなに努力しようと、試験に合格する訳がない。
だから、会うたびに突き放すのに、懲りもせずに翌日にはまた僕にまとわりつく。
子犬のような無邪気さで。
そんなあなたのそれに、僕の心は容易く揺らぐ。
なんの見返りも求めることなく差し出される温かさを、受け止めたい衝動に負けそうになる。
未来など持たない僕に、そんな事は許されないのに。
だから、歩きながら自らに言い聞かせる。
僕には未来などないのだと。
それでも背後が気になってしまう。
あなたが泣いているかも知れないと。