• テキストサイズ

ふたりで紡ぐ魔法の呪文/ワンド・オブ・フォーチュン【エスト】

第1章 第一章


「もう、落ち着きましたか?」

泣いていたのを悟られたくないだろうと言う察しはついたので、言葉を変えて訊ねると、

「えっ!?」

驚いた顔で再びこちらを見る。

「まだ落ち着きませんか?」

嫌われた方が楽だと思いながら、嫌われてない事に安堵する。
そしてその安堵からか、知らず声音も柔らかいものとなる。

「ううん、もう、平気」

「では、戻りましょうか?」

そう言って立ち上がる僕に、

「あれ?エストの用事は?」

と訊ねられて焦った僕は、

「あなたが泣き止んだのなら、もう用事は済みました」

と、思わず口にしてしまう。

「今、なんて…」

ウッカリ出た言葉を何度も言えるはずもなく、

「行きますよ」

と、触れてる事を躊躇っていたこの手で、動かないあなたの腕を掴んだ。
そうして歩き出す僕に、

「…ありがとう、エスト」

と、小さく呟く。

結局あなたには敵わない。
心配で戻った事も知られている。

なのにあんなヒドイ言葉しか言えない僕に、それでもあなたは「ありがとう」と言うのだから。

もしも僕が偽ることなく、本当の闇属性の魔法使いだったとしたら、あなたと僕のこの関係は何か変わっていたのだろうか?





⇒第二章に続く
/ 9ページ  
エモアイコン:泣けたエモアイコン:キュンとしたエモアイコン:エロかったエモアイコン:驚いたエモアイコン:なごんだエモアイコン:素敵!エモアイコン:面白い
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp