第2章 ハツコイ
~♪~~♪
5時を知らせる曲が流れる。
確かこれ「夕焼けこやけ」だったっけ。
てか、いつまで立ち話しとけば良いんだろ。
花音の家の前にいるうちらは、もう30分程話している。
ちゃんとに言えば、花音のノロケ話を聞いてるだけ。
長い。いつもに増して、長い。
「でねでねっ!悠人が「真利の方が可愛いぜ」って、言ってくれたんだよっ!もう、あたし嬉しくてさぁ~!」
その話何回目?ねえ。
もう5回は聞いた気がするんだけど。
心の中で文句を言いながら、ひきつった笑顔で相づちを打つ。
もう秋の後半のため、日が暮れるのが早い。
さっきまで夕陽がきれいだったのに、空は薄暗くなり始めていた。
おまけに肌寒い。
マフラーしとけば良かった…
悔やみながら、制服のポケットに両手を突っ込む。
「今週の日曜日もデートするんだ!楽しみだな~♪」
「そうなんだ。楽しんできてね」
「もちろん!じゃあ、また明日ね、真利」
「えっ? あ、う、うん。またね」
花音は話し始めると長いけど、終わるときは急に終わる。
もう長い付き合いだけど、いまだに慣れないんだよね、これ…。
花音に手を振りながら、帰路につく。
「…好きな人、ねぇ……」
もう既に暗くなった空を見上げ、不意に呟く。
正直、自分でも良くわかってない。
あいつとは、只の腐れ縁だと思ってた。
だから、何でも言い合えるのが、普通だと思ってた。
男子恐怖症のうちにとって、数少ない男友達だ。
けど……
うちの、この気持ちは、恋なんだろうか?