第2章 ハツコイ
思い切り走って来たからか、普段よりも10分近く早く学校に着いた。
息が切れて苦しい。
「…はぁ……つっかれたぁ……」
誰も居ない昇降口で、溜め息混じりに言う。
3年生の教室は、二階。
階段を上り自分のクラス、3-Aに入る。
一番乗りかと思ったが、人影がある。
その人影は、うちに気付くと怪訝そうな顔をしながら近寄ってきた。
「おはよう。なんだお前、朝から息切らせて。つか、武内は一緒じゃねーのか?」
こいつは、幼馴染みの田倉龍也。
生まれてこのかた、違うクラスになったことがない。
うちは、説明するのがメンドーだったので
一言。
「……逃げてきた…」
とだけ言っておいた。
「へー……って、はあ?誰から?」
龍也は一瞬納得した後、裏返りかけた声で、うちに聞いてくる。
疲れたのと、朝から嫌なモノを見てしまったイライラが重なり、少し怒気を含んだ声で返す。
「…別に、誰だって良いじゃん」
「……まぁ、な」
曖昧な感じで返す龍也。
うちの今の気分を汲み取ったのか?
まあ、それは別にどーでも良いけど。