第2章 ハツコイ
「花音、好きって、どういうことだと思う?」
学校からの帰り道、うちは遠くを見ながらポソリと呟いた。
花音は、思いもよらなかったのか「はぁ?」と裏返りかけた声で、怪訝な顔をしながらうちの顔を覗きこむ。
「何、真利。いきなりどうしたの?」
「え?んと…いや、まぁ……いいじゃん?」
「いや、いいじゃん?じゃないわ!」
ビシィ!と花音がうちに向かってツッコミをいれてきた。
興奮した声で、花音は続ける。
「だって、あんた男子恐怖症じゃん!あんたに青春なんて、来ないと思ってたけど…」
「え、ちょ…ひどくない?」
「ひどくない!誰だって、そう思うでしょ。…で、誰なの?」
「は?誰…と、言いますと?」
うちがそう言うと、花音は「またまた~」と言いながら、うちの背中を叩く。
い、痛い…
「相手に決まってんじゃん!誰なの?あたしらの学年?それとも、意外と年下だったりして?」
ニヤニヤしながら花音は言う。
近所のおばちゃんか、あんたは。
てか、年下だと意外なのか?うち。
まあ違うんだけど。
……誰、と言われてもなぁ…
「…はっ!まさか、あたしの彼氏じゃないよね!?」
「な訳ないでしょ。誰があんなチャラ男と」
「悠人はチャラくないって!カッコいいじゃん!」
「はいはい…」
花音の彼氏、堀北 悠人先輩は、うちらの2つ上。
世間一般からすれば、チャラ男の部類。
花音はチャラくないって言うけど…
一番苦手なタイプなんだよね…
「そういえばさ!この前のデートでさぁ♪」
満面の笑みで、花音が語り始める。
よし、方向転換成功(笑)
いつもと代わり映えのない話を聞きながら、適当に相づちを打つ。
このまま忘れておいて。お願いだから。