第1章 猫よりももっとずっと
かと言って、こんなに素っ気なく返す程、興味がない訳でもないのに。
なんだか胸がすっきりしない。
もやもやする何かが、胸につっかえているかのように。
「私、さっき、山崎さんに案内して頂いて、会ってきたんです」
いつも山崎で遊んでいる事に対する仕返しだろうか?
きっとこうなる事を見越して案内したんだ。
そう思って、でも、また考え直す。
山崎がそこまで考えて彼女を猫の元に案内するだろうか?
恐らく噂を耳にした彼女が、こんな風に興奮気味に話すから、それで案内したに違いない。
だとしても迷惑な話だ。
俺に会いに来たのに、今のあなたはここには居ない猫に夢中なのだから。
「そうですか」
また素っ気なく返す俺の声に、彼女の興奮は冷めてしまったようだった。
その素っ気なさを怒りと勘違いしたのか、伺うように俺を見つめる視線を感じた。
「あの…」
気まずい空気が流れるのをなんとかしようと口を開いた彼女。
けれど、それを遮るみたいに、子猫が鳴いた。
にゃ~。
聞こえたそれに、また彼女は嬉しそうに、
「聞こえましたか?沖田さん!凄い可愛い鳴き声ですよね?」
また興奮気味に話しかけて来る。
全く、懲りない人だ。
そんな彼女がおかしくて、クスリと笑い、俺は手入れをしていた剣を鞘に戻す。
カチッと言う音と共にすっと立ち上がり、彼女のそばに。
「おっ、沖田さん?」
近い距離に驚いた彼女は、大きな瞳をさらに大きく見開いた。
「さんだって、可愛く鳴けますよね?」
悪戯な笑みを浮かべて訊ねると、
「えっ!?」
驚いた様子の彼女。
けれど彼女は知っているから。