第1章 君と僕は許嫁
「は?」
高校2年、5月、朝6時
いつも通りに起きて、制服に着替え、朝食を食べる
いつも通りの日常
しかし、父さんの口から放たれた言葉によって
俺の人生は大きく変わったような気がする
「一、実はお前には許嫁がいるんだ」
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「意味わかんねえし」
「そのままの意味だ。高校卒業して大学も出たら、許嫁と結婚してもらう」
「何のためにだよ。別に受け継ぐものなんかねえだろ」
会社を興したわけでもないし、道場があるわけでもない
一般家庭の一般会社員の一般息子と結婚してもいいことなどひとつもない
というか、どうしたらそういう話に転がるんだよ
「受け継ぐものがなくても決まったものは決まったから。相手はなさんと言うんだ」
「?誰だよ」
「あれ、お前と同じクラスなはずなんだけどな」
ぶはっ、とコーヒーを吹き出した
同じ学校なうえに、同じクラスかよ
…………
名前は聞いたことがある気がする
顔が全然でてこねえ……
今年から一緒のクラスだとしても、一か月一緒のクラスなのに、覚えてねえってことありえんのか
いや、実際俺がそうだ
「つーか、なんでいきなりそんな話になったんだよ」
「さん家の父さんと俺が親友でな。お互いに子供ができたら許嫁として結婚させようって約束してたんだ」
らんまかよ
という突込みが喉元から出そうになって、それを必死に飲み込んだ
そういう設定はマンガの世界だけかと思っていたが……
俺は、半信半疑のまま家を出た