第2章 お試し期間
と一か月付き合うことになった
一か月付き合ってお互いに嫌悪感を抱いたら、許嫁の件はなし、という条件付きで
裏を返せばそれは、嫌悪感を抱くことなくむしろ好意を抱いたら許嫁として、これからを過ごすということ
のことはたぶん嫌いじゃない
でも、そういう対象で見れるかと言ったらまた別問題
昨日手を繋いだけどよ……
それが恋愛対象ととらえるやつもいるかもしれない
俺もそう思っていたし、昨日のあれは俺もに少なからず好意を抱いていたんだと思う
一番後ろの席、頬杖をつき、黒板の字を見るふりをして、ななめ右前の彼女を見つめた
ショートボブの艶のある黒い髪
俺は、「好き」とか「愛してる」っていう気持ちがわからない
及川に群がる女子は、及川のファンで、及川のことが好きなんだろう
でも、本当に好きなのかと言ったらどうなんだ?
及川が言っていた
「彼女たちは俺のことが好きだけど、俺のことは好きじゃないんだよ」
意味がわかんねえ、と言ったら「岩ちゃんはバカなの?」って笑顔で言われた
むかついたから何発か殴ったけど
本当にどういう意味だ
よくわからない
よく少女漫画で、好きな奴ができたら話すだけで心臓がうるさくなる、とか、無意識に目で追っちゃうとか言うけど
信じられない
花巻や松川なんて美人を見つけると、目で追いかけてるし、それを言ったら「無意識だ」なんていうし、
だからと言ってそれが「好き」に繋がっているわけではない
考えれば考えるほど、答えの見えないループにはまる
深い溜息を吐いて、机に突っ伏した
恋愛をしたことがない俺には超難問な問題だ