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テニスの王子様 短編集

第1章 素直になれなくて 忍足謙也


これではっきり自覚してしもた。
うちは、謙也が好きなんや…
それでも、謙也の事考えるだけで今までの自分たちの関係を恨んでしまう。
もっと素直やったら…。


―屋上―
あ"ー…謙也の顔見えへん思ったら、ついに授業サボってしもた…。

朝は、結局遅刻してしまって…。オサムちゃんと蔵に説教喰らって…。
しかも、二人ともなんや知らんけどニヤニヤしとった。
失礼や←

「~~~ッ、謙也のアホ!」

「…ことの、どないしたと?…いきなり叫んだりして。」

後ろから声が聞こえて、振り向くと…同じ部活仲間の姿。

「ち…千歳…!!今の…聞いとった…?」

「バッチリな。…もしかして、ことのは謙也の事。」

「…好き…なんやと思う…」

「…謙也も悪い男と…。ことの…俺、ことのの事、好きなんばい。」

「…え…ち、千歳…?う、嘘はいかんよ嘘は。」

「嘘じゃなか…。ことのが転校してきてからずっと…好きだったと…。」

言いながらうちは腕を引き寄せられる。
大きい千歳の腕の中、うちは抱きしめられた。

「ふぇっ…///ちょ、千歳…!あの…千歳の気持ちは嬉しいけど!…けど、うちが好きなんは…。」

カタンッ

不意に、音が聞こえて、千歳の力が緩む。
恐る恐る音がした方を見る。
そこには、

「…!け、謙也!!」

「あー…悪い。別に盗み聞きしとった訳やなくて…ただ、もうすぐ部活の時間やから…堪忍!…邪魔…したな。」

そう言い、バタバタと階段を降りていく…あかん、早う…

「謙也、ち、ちが…っ、千歳!離してや!!」

「…無理たい…俺じゃ、だめと…?」

「…それでもうちは…うちは謙也が…!」

千歳の腕を振り切り、謙也を追う。


「ははっ…謙也が羨ましいったい…。ごめんな、ことの、謙也。」

千歳は、踵を返し屋上を後にした。
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