第1章 素直になれなくて 忍足謙也
―謙也side―
時は少し戻って数分前。
はぁ…何で俺があいつを呼びに行かなあかんねん…。けど、白石から言われたしなぁ…。
「…………う、嘘はいかんよ嘘は。」
ん?ことのの声?何やってんねやあいつ。
「……………………ずっと、好きだったと…。」
え…千歳…あいつ、ことののこと好きだったんか…?…!?千歳、あいつ何やっとんのや、何でことのの事抱きしめとんのや!?……って、何で俺がこないに動揺してんのや…別に関係あらへんやん…とにかく、気付かれんうちに…!!っと…
カタンッ
あちゃー…やってもた…。
「あー…悪い。別に盗み聞きしとった訳やなくて…。ただ、もうすぐ部活の時間やから…堪忍!邪魔…したな。」
あかん、何言ってんねや俺。
ことのが千歳に告られとんの見て…何かイライラすんねん…何でや…。
何でこんなに…苦しいんや…。
「謙也!待って!!」
やっと、追いついた…。
「ことの…お前、ええんか…千歳は…。」
やっぱり…。
「あんな!こっち向かんでええから…話…聞いて欲しいねん…」
「………………(コクッ)」
言うんや…ちゃんと、素直に…
「さっき…千歳からから好きって言われてん…けどな、うち…うちは謙也の事が好きなんや!」
「……………。」
「侑君に聞いてもらったんや…。うち、謙也とは喧嘩ばっかしてたやん?…正直…好きとか…分からんかったねんけどな…謙也に誤解されて…ほんま嫌やってん…。」
「ことの…すまん!俺、てっきり…千歳の事が好きなんやと…さっき、千歳に抱きしめられとって…顔、赤くしとったやん…」
「そ、それは…と、突然やったから…で、でも…なんで謙也がそんなこと気にして…。」
「…俺も…お前に言われて気付いたねん…最初はただの女友達やと思っとった…せやけど…ことのの事…誰にも渡したないって思い始めてて…」
急に謙也が振り返る。しかも、顔を真っ赤に染めながら
「…お、俺も…ことのが好きや…つ、付きおうてくれ!///」
「っ、うん!//」
謙也が近付いてくる。肩におかれた謙也の大きな手。力が入った所が少し痛かったんやけど、そんな謙也が可愛くて…愛おしくて…
素直になれんでごめんなって意味も込めながらキスをした。
~END~