第1章 初雪*出水公平
しばらくそうしていると
背中に温もりを感じた。
『なに?』
「寒いって言ってたし」
『言ってたし?』
「なんか…いなくなりそうだったから」
そう言われてギュッと抱き寄せられた。
暖かいから私は別にいいのだが…
後ろの出水から少し早い鼓動を感じる。
部屋に響く時計の音。
こうも静かだとやけに大きく感じる。
「………誕生日、おめでと。」
『え』
ふと時計に目をやると0時を回って
10秒も経っていたなかった。
0時ぴったりに言ってくれたのだろうか。
『ありがと。今年は一番乗りだね』
「去年は迅さんに先越されたからな」
『日付変わるなり一番に
セクハラされたっけ…』
「迅さんらしいな。でも…」
『ん?』
「お前は俺のモンだろ?」
去年の誕生日。
私は、出水の彼女になったんです。
「迅さんにやられた分。」
そう言ってキスした出水の顔は
幼い男の子がイタズラを企んでいるときの
顔でした。
fin.