第3章 35円と価値の変わらないもの
しばらくすると、小学2年生ぐらいの女の子が歩いてきた。
賢そうな子だ、やっぱり学者になる子は子供の頃から頭が良いのだろうな。
昔ヤンチャしてたけど……って言う社長さんや芸能人はいても、昔ヤンチャしていた学者さんなんて聞いたことないし。
地頭が良いというか、さっきのイケメン先生といい、顔や頭、体格など、生まれた瞬間からの不公平はあると思う。
人生スタートの瞬間から、カードが10枚配られる恵まれた人がいれば、2枚しか配られない僕のような人間が、ポーカーをやるようなものだ。
最高でも、ワンペアしかできない手札で生きていくしかないのだ。
そんな事を考えていたら、トラックが制限速度を遥かに超えた速度で近づいてきた。
スピード違反だ!
さらに運転手はケータイを弄りながら運転している。
前方不注意だ!!
おまけに赤ら顔で、飲酒運転間違いなしの数え役満だ!!!
交通事故の加害者の鑑(かがみ)のような運転手を見ながら、彼女に聞いてみた。
「ひょっとして、あの人どこかの市の職員じゃない?」
「よく分かったわね。そして事故後に被害者見捨てて逃げて、友達に身代わり頼んだり、
水を大量に飲んで飲酒を誤魔化そうとするのよ」
歴史は繰り返す……しかし、それを止めることだってできるはずだ!!
「さぁ行け!!悲劇が歴史の中に埋もれる前に!!!」
「ちょ……何カッコつけて丸投げしてるのよ!!!、まぁやるけど……」
納得がいかないといった顔をしつつも、彼女は女の子に突っ込んでゆくトラックの前に瞬間移動する。
トラックに対して半身で、左手を突き出すようなポーズでリラックスした様子で構える。
まるで片手で受け止めそうとするように……
無茶だ!!いくらなんでも片手てでなんて!!!
ノンブレーキで美少女と、美幼女に突っ込んでゆくトラック!!!
ドンッッッ!!!