第10章 『厄介者』
一口飲んでホッとしてるとキッチンから次はトーカちゃんがやって来て私の目の前に小皿に盛ったクッキーを置いた。
「サービス」
珍しいこともあるものだと思ったが私は喜んで口にした。
「う"っっっ!!!な、なにこれ!?!?」
(え、え!?辛いっ!!いや、甘い!?!?)
見た目では全く想像のつかない壮絶な味のクッキーに私は悶絶した。
右手を伸ばして助けを求めるジェスチャーをしてるとマスターが慌てたように水を渡してくれたので私はそれを一気飲みして口の中を洗い流した。
「っっ!!はぁ…!何…今の………」
(食べたのはクッキーだったはず…)
「クッキーに決まってんだろ」
「もしかしてトーカちゃんが作った?」
(もしかしなくてもだろうけど)
「まあね」
「何混ぜた…」
(確実に辛子が入ってると思うのは何故だろう)
ジト目で尋ねると仕方が無いとでも言うように混ぜたものを上げていった。
最初まではレシピ通りの材料が出ていて一体何をしたんだと思っていたらその後に衝撃の言葉が出た。
「…、後は隠し味にコーヒーをすりつぶした物をマスタードで和えてから味醂って書いてた液体でとかした物を生地に混ぜた」
その言葉に唖然とした。
一体何を思ってそれらを合わせてクッキーに入れたのか…。味覚が違うから味見ができないのは知ってる。なら、冒険せずにレシピ通りで終わらせて欲しかった……。
材料を聞いてから味をもう一度想像したせいで折角飲み込んだクッキー(仮)をリバースするところだった。
「取り敢えず感想言っていい?」
「ああ。」
「クソまずい。」
「…」
ズバッとそう言ってから私は少し冷めてしまったコーヒーを飲み切って口の中の味をリセットした。
「何でだよ。隠し味もちゃんとしたんだぞ」
(隠された味を引き出せばいいんだろ)
「いや、隠せてないし。隠せないよあんな濃い隠し味。…今度私と作ろう…。教えるし、味見役もするから」
(これ、新メニューとかで考えてたりしないよな)
「…わかった」
私は内心心配を抱えつつそう提案するとトーカちゃんが案外素直に頷いたので悪気はなかったのだと流すことにした。
すると、マスターがお詫びにということでコーヒーのお代わりを淹れてくれたので逆にラッキーと思っていた。