第10章 『厄介者』
ヒナミちゃんがカフェ あんてぃく で暮らすようになってから早一週間がたった。
この一週間はなんの問題も起きることなく平和に暮らしていた。それに嬉しいこともあった。それは、永近の怪我が治り通院の必要も無くなったことだ。
対して未だに学校に現れない西尾 錦の事が心配だった。もしかしたらこのまま学校を辞めてしまうのかとも考えていた。
カランコロン…
「こんにちは」
「いらっしゃい、安部さん」
出迎えてくれたのは柔和な笑顔を浮かべるマスターだ。
「今日はエスプレッソでお願いします!」
「珍しいね。いつもはブレンドなのに」
そう言いながらも手際良くコーヒーを淹れていく。
コーヒーができるのを待つためにカウンターに座っているとキッチンの方から金木がやって来た。
「金木君こんにちわ。最近大学サボり過ぎだよ?出席そろそろやばいと思って今日の大教室の授業は代返しといたから」
「そういえばそうだね…。ありがとう。
僕もそろそろ復帰するよ」
「そうして〜。ゼミの方も私と永近だけじゃ中々進まないしさ」
私は頬杖をつきながら金木に愚うたれた。
そうしてるとカウンターの向こうからとても良い匂いがしてからコトンと音が鳴った。
「お待たせ。エスプレッソだよ」
そう言って出されたコーヒーを私は笑顔で受け取った。
「流石。良い香り〜」
(ここのコーヒーに勝てる喫茶店は無いよね)