第9章 『家族』
「よし、今頃トーカちゃんがマスターから色々言われてると思うからその間に金木君の傷治そう。
その傷は自分で中々治せないでしょ?」
部屋に入って直ぐにそう声をかけたが私から逃げるかのように素早く部屋の奥へ行った。
私が扉のところにいるから奥にしか行くところがない状態だ。
「そんな怪我はしてないから大丈夫…。」
「嘘をつかない。暴露てるから」
下を向いて私の動きに気づかない金木に素早く近づき脇腹を叩いた。
「うぐっっ!」
(傷にヒットっっ)
私はうずくまる金木を見下ろしていた。
「ね?暴露てるから大人しく傷出して。じゃないも無理やり脱がすよ」
(縛道で縛ったら一発なんだから)
そう言うと観念したようで渋々と傷を見せた。
「あ、血出てるね。ごめん、強く叩き過ぎた」
「大丈夫だよこれぐらい」
強く叩き過ぎたことを謝り、私は傷を見ていった。
「クインケでやられると本当に傷治らないんだね。取り敢えず治癒の術使うね」
(流石、喰種を殺す武器だ。人間の知恵には恐れ入るよ。一体何を材料にしてるんだろう…?)
私はそう言うと懐にしまっていた札を1枚取り出し目を閉じて呪文を唱え、傷にかざした。
札は淡く光ってから粒子になって霧散した。
それを感じて私は目を開くと傷が縮んでいた。
「完治まで行かないか…。どう?金木君、痛みの方は」
(普通は食事をしないと治せないレベルの傷だからね。もう一回してもいいけどこれ以上は金木君の治癒力の向上を妨げる危険があるな)
「大分楽になったよ。」
(さっきまであった痛みが殆どなくなった。…空腹も)
「それはよかった!もう一回使ったら完治させてあげれるんだけど、それすると金木君の治癒力が伸びないから自力で治して。」
「今ので十分だよ!ありがとう」
さっきより金木の顔色が良くなってるのを確認して私は微笑んだ。
「んじゃ、マスターのとこ戻ろうか。そろそろ2人も話し終わってる気がするし、トーカちゃんも怪我してたからね」
「うん」