第9章 『家族』
「はじめまして、陽菜です。
あなたは?」
「……俺のことは知らなくていい。
あんてぃくの者だとだけ知ってろ」
(こいつが芳村さんが言ってた人間か)
私はこの答えでマスターの仲間だと判断できたので今は味方だと考えた。
「おい、金木。トーカ達の所へ行くぞ。」
そう言って彼は1人で先に歩き出した。
私と金木もそれについて行った。
そこには倒れている真戸さんと、怪我をして膝をついているトーカちゃん、そして泣いているヒナミちゃんがいた。
私は経緯を知りたくてトーカちゃんの後ろの柱に持たれていた紅蓮を目で呼んだ。
「何があったの?」
(真戸さん以外は無事か…)
「ああ。俺が来た時はこの目付きの悪い女が柱に縫い止められていた。止めを刺されそうになってた。」
「じゃあ、紅蓮が助けてくれたの?」
「いや、助けたのは こっちのちっさい奴だ。
俺は捕まってた奴を解放しただけだ。それも隠行してたから気づいて無いだろうがな」
「そっか…。じゃあ彼を殺したのはトーカちゃんだね。
ありがとう、紅蓮。無理いって」
「いや、いい。
それより帰ったらその怪我について話せよ」
(こいつ、目を離したら確実に怪我してくるな。
いつになったら心配せずに済むようになってくれるんだ)
「…。ん」
(うわぁ…説教コース確定した。わかってたけど…)
それだけ言うと紅蓮はスッと姿を消した。
「珍しい…自分から姿消すなんて」
私は小さい声でそう呟いた後、金木達と共にあんてぃくへと、帰った。