第9章 『家族』
「本当にごめん!後で幾らでも説教は受けるから 今は河川敷の橋の下まで急いで行って!!
この子の話だと誰かが争ってるみたい!
多分喰種と捜査官だと思う!
いくら雑鬼だといっても妖を怯えさせれるのは限られる。」
私は手に掴んでる雑鬼を見せながら早口でまくし立てた。
『わかったよ。だがお前は無理をするなよ!』
「それはこっちのセリフ!
攻撃は絶対駄目だからね。なにがあっても!
高校生と大学生の2人を守ってあげて!でも相手に傷はつけたらダメだ。人に手は上げるなよ」
『…ああ』
(お前が危険に晒されなければな)
その切羽詰まった状態を汲み取ってくれたようで紅蓮は大きなため息を残して白い物の怪の姿になり駆けていった。
その背中を見送りつつ私も急いで行った。
橋に着く手前で私は人影を見つけた。
(あれは…亜門さんと 金木君…?)
更に近づいてみるとクインケを壊された亜門さんがいた。
その向かいには赫子を出した金木がいた。
「逃げて…っ!!僕を人殺しにしないでくれっ!!」
「なっ!!私はっ」
シュタッ
私は直ぐ様に2人の間に飛び込んで行った。
そして亜門さんの襟を引っ張って金木から引き離した。
「安部さん!?
何故貴方がここに!!」
「ちょっと通りかかりました。早く逃げて下さい」
(紅蓮は奥に行ってるね。よかった。
でも、ここに金木君がいるなら向こうはトーカちゃんだけかな)
視線は金木に向けたまま、私は亜門さんにそう言った。
「安部さんだけを置いて行ける訳がないでしょう!」
「クインケを持たない貴方は足手まといです。」
「っ!!だがっ」
「邪魔です。早く逃げて下さい。
どう見ても相手が悪い。守りながら何て無理です。
だから早く逃げて!!!私は死にませんから」
(これで捜査官を退けることが出来た)
大声でそう怒鳴ると亜門さんは苦虫を噛み潰したような表情で無念そうにその場から立ち去った。