第9章 『家族』
「大丈夫ですか?」
(大丈夫じゃないよね。これは)
私が肩を叩こうとしたらいきなりその手を掴んで噛みつこうとしてきた。
「縛」
(やっぱり喰種か…、でもこんなに傷があるなんて珍しい。縄張り争いとかで負ったのかな)
私は噛みつこうしてきた所を術で縛った。
「っ!!!なん、だよっ!!」
(くっそ……!なんだこれ!? 餌が来たと思ったのによ…ついてねぇ)
「…私を攻撃しないって言うなら解いてあげるよ。それが出来ないならそのままでいて?傷治してあげるから」
(喰種も人も傷ついていたら一緒なのにね…)
私の言ってる意味を中々理解しないのかずっと私を睨みつけて今にも飛び掛かってきそうなので私はそのまま傷を手当てすることにした。
手をかざし傷を一つ一つ癒していった。
大きな傷が多くて私は驚いていた。
そして傷の治りが遅いことから赫子での攻撃を受けたことは明白だった。
「お前……。何で俺を助けるんだよ」
(こいつは一体…)
「ん?倒れてるから」
そう答えると男の人は珍しい生き物でも見るかのように私をジーっと見てきた。
「お前は何だ」
「大分元気になってきましたね。それだけ喋れるなら。」
(傷もほとんど塞ぎかけまできてるしね)
「おい、俺の質問に答えろ」
「私ばっかり答えるのは嫌です。
次は私の番。あなたの名前は?」
和かに笑ってそう聞いた。
「あ?何で俺がお前なんかに!って!!」
と言った直後に私はまだ手のつけてない傷をつついた。
「名前は?」
笑顔を顔に貼り付けたまま私はもう一度聞いた。
「…………。アヤト」
「アヤトね!私は陽菜、人間だよ。喰種のアヤト君」
「!?お前っ!!」
(バレてるのかよ!)
「…え、なんで驚いてんの?さっき私の手 食べようとしてたじゃん」
(あ、この人きっとアホだ!てか短気だ!)
私がそう言うとアヤトは ハッとした顔をしてから視線をそらした。
忘れていたようだ。