第8章 『仕事』
しばらく かくれんぼをして、その後に鬼ごっこをした。
そして次に少年が言ったのは
『僕…散歩がしたい』
と言ったのだ。
「散歩か!いいよ!何処に行く?」
「はぁはぁはぁ……。」
(まだ続くのか! もう4時前だぞ!)
肩で息をしながら亜門さんが私の肩を叩いてきた。
私はそんな亜門さんを見て耳元に口を寄せ、小声でこう言った。
「これが最後です」
(さて仕上げだ)
すると少し目を開き見つめてきた。
私はそんな亜門さんにニコリと微笑んで「行きましょう」と声をかけた。
こうして私達は幽霊の少年を真ん中に挟み3人で手を繋ぎながら深夜の街を歩き出した。
***
私達は近くの公園や遊歩道を歩き、今は河川敷を歩いていた。
そしてちょうど線路が通っている橋の下でピタリと少年は歩くのを止めた。
「ここ?」
私がしゃかんでそう聞くとコクンと頷いた。
そんな少年の頭を私は撫でてからスッと立ち上がった。
そして鞄から数珠を取り出し 左手に巻きつけ 手を合わせた。
「…安部さん、何をしてるんですか?」
(ここで祓うのか?)
「この子の本体を見つけます。この辺りに眠っているそうなので」
私はそう答えると呪を唱えだした。
「この地に眠りし少年の器よ その居所を示せ」
そう言うと、ある地面の一角に生える草達が風も吹いていないのにサワサワと揺れた。
「見ーつけた。……こんな所に長い間独りにしてごめんね。 やっと見つけたよ」
草が揺れた辺りの土を軽く掘るとその下から噛み砕かれた痕の残る骨が現れた。
「っ!これは…」
(これがあの少年だというのか? 信じられない)
「長いかくれんぼは終わったよ。 もう心残りはない?」
驚いている亜門さんを無視して少年に語りかけた。
『うん、ありがとう!僕を見つけてくれて!
お姉さんとお兄さんと遊べて楽しかったよ!!』
そう言って少年は淡い光に包まれて私達の目には映らなくなった。
「…成仏できた。 亜門さん帰りましょうか。
仕事終わりましたよ」
「今ので、成仏したのか…?」
「はい。無事に送れました」
私は微笑みながらそう答えた。