第8章 『仕事』
「こんばんは」
私はボールが落ちている所まできてその横にいる幽霊に声をかけた。
「?安部さん、誰に声をかけているんですか?」
(誰かいるのか?……本当に幽霊なのか)
「ボールの直ぐ右隣りに居ますよ。何も見えないですか?」
(見えてないか。子供とかは心が素直だからこういうのを視やすいからね)
「…見えません。危険ですか?」
(本当に実在しているのか)
亜門さんが少し顔に緊張を走らせてそう聞いてきた。
「いえ、危険は全くないです。
今回のに関しては亜門さんにも来てもらってよかったかもしれません。
今晩はこの子と遊びましょう」
「遊ぶだと?」
(そんな悠長なことをしてていいのか!?)
「そうです。
…この幽霊は小さい子供の霊です。きっと喰種に殺されたんでしょう…。それにここに居ると言うことは親もいないんでしょうね。
自分と似た境遇の子供達か集まるここなら自分のことを気づいてくれるんじゃないか と思って」
私は子どもの霊の前にしゃがみ込み「何して遊ぶ?」と声をかけた。
するとその子が表情を明るくして『かくれんぼ!』と答えたので私は頷いた。
「……子どもの霊。
わかりました。私も協力します。」
(喰種の犠牲になった子どもか、こんな事になる子が居なくなるように俺たちがもっと戦わねば)
「ありがとうございます。
この子はかくれんぼがしたいそうなのでそのつもりで」
と言ったら「私にはその子が見えないのですが…」と少し焦った様子で言ってきた。
私はそのことをうっかり忘れていて 危うくそのまま進める所だった事を謝り、自分に身につけていたブレスレットを差し出した。
「これをつけてたら見えますよ」と説明を軽くして。
「!!凄い」
(この子が)
亜門さんはそのブレスレットを手につけると目に映った幽霊に驚いていた。
幽霊の見た目は四歳ぐらいの少年で半袖 半パンという出で立ちだ。
『早く遊ぼ!! 鬼はお兄ちゃんね!!
ちゃんと10秒数えるんだよ!!』
と言って私の手を握り駆け出した。
亜門さんは抗議をしようと口を開いたが素早く走り去って行ったので諦めて鬼をすることにした。