第5章 『食事』
金木は固唾をのみながらゆっくりとハンバーグをナイフで切り、緊張の面持ちで口へと運んで行った。
そしてついにパクリとハンバーグを口にした。
「!!お、美味しい!ハンバーグの味がわかる!!
肉汁が口の中で染み出できて口いっぱいに広がっていく!!
……前に食べた時は、思いっきり戻したのに」
金木は一口目を食べてからは目に薄っすらと涙を浮かべながらハンバーグを次々に口に運んでいき、あっという間に完食した。
「よかった!
大学でご飯する時は言ってね?
まだまだフリは出来ないだろうからこの術でサポートするよ!」
私は術が成功したことにホッとして大きく息を吐き出した。
「これは、すごいね。
安部さん、これは私達にも効果があるのかい?」
「それは試した事がないのでわからないです。
金木君はもとは人間だから成功すると思ってやったので」
マスターにそう尋ねられたが、そこまでのことはわからないのでハッキリとは答えられなかった。
トーカちゃんは何かを考えているようで何も言わずに椅子に座っていた。
このあと金木にさっきのハンバーグは必ず吐き出すように!と忠告してから術を解除した。
「この術はずっとかけっぱなしには出来ないの?」
「出来ないこともないけど対象者と術者が離れれば離れるほど私の消費する霊力が多くなるんだ。
だからかけっぱなしにしとくと、いざという時に使えなくなるかもしれないんだよ」
「そっか…なら仕方ないね」
「ごめんね、だからご飯を食べる時は絶対に私を呼んで?そしたら普通のご飯も苦労せずに食べれるから。そしたら周りにも気づかれにくくなるはずだよ。
それと、いつも私が一緒とは限らないから練習は続けてよ?」
「それは勿論だよ」
(陽菜ちゃんがいて本当によかった…なんでこんなにも助けてくれるんだろう?)
「それともうひとつ!今はないけど私の舌の神経と短時間だけでも私なしで繋げれるようにするために呪具を作るね」
私はこの後にもう一度ハンバーグを吐き出すように念を押してからもう遅いということで家に帰ることにした。
すると、夜は危ないということで金木、そしてトーカちゃんが送ってくれることになった。