第5章 『食事』
「簡潔に言うと、金木君の舌の神経を私の神経と連動させるんです。
方法は陰陽術の一つなんで説明が難しいんですけど…
このペンは私の霊力を籠めています。これで特定の呪印を描けば術者の神経と相手の神経を繋げる事ができるんです。
でも神経を繋げるだけで基本的に臓器の作りは変わりない。だから食べ物を飲み込んだりしたら吐き出すことは忘れないで」
(臓器の機能ごと繋げるのは今は無理だし両者に負担が大きすぎるからね)
そう説明すると私以外のこの部屋にいる全員が驚きの表情を浮かべていた。
「陽菜ちゃんそんなことできるの!?」
(それが本当なら僕はヒトを食べなくて済むかもしれない!)
「……まじかよ」
(なら…もしかしたら依子の……)
「……」
(予想以上だね……)
「やるかやらないかは金木君自身が決めて?
説明不足だから不安はあると思うけど、私を信じて欲しい」
私は金木を真っ直ぐ見つめた。
いきなりのことで金木も戸惑っているのが感じられたから私は静かに待っていた。
トーカちゃんとマスターも同様に静かにしていた。
「陽菜ちゃんを信じるよ。
僕にその術をかけて欲しい。」
(もう一度、普通の食事をとれるなら…)
「わかった。信じてくれてありがとう。
それじゃあ金木君、そのシャツの首元のボタンだけ緩めてもらっていい?
今回繋げるのは舌だから喉に描くのが1番効果があって効率がいいんだ」
私は早速準備に取り掛かった。