第5章 『食事』
「それ、美味しそうですね」
私はサンドイッチに目を向けながらそう呟いた。
「そうかい?ありがとう。」
そう言いながらマスターはそれを控え室の中にあった机に置き金木へと向き直った。
「金木君、人の世で暮らす喰種は先ずこれを学ばなければならない」
そう言ってマスターはサンドイッチを一つ手に取り、パクリとかぶりついて美味しそうに食べた。
「すごいですね」
(凄い演技力だ)
「!?え…」
(な、何かこのサンドイッチには喰種でも食べれる仕掛けがあるの…!?)
私は感心していたが金木はどうやら驚き過ぎたようで口が開いたまんまになっている。
そして、マスターにやってご覧?とサンドイッチを手渡された金木は緊張しながらもサンドイッチにかぶりついた。
「うえ“え“ぇぇぇ……!
ゴホッ ゴホッ ゴホッ!!!」
しかし、現実はそこまで甘くはなかったようだ。
「金木君だいじょうぶ…?じゃないよね。」
私はむせる金木を気遣ってマスターにコーヒーを作っていい許可を貰い下のカウンターにコーヒーを作りに行った。
私がコーヒーを持って上に戻ったらマスターが食事の方法を教えているところだった。
壁際ではクスクスとトーカちゃんが笑っているけど理由はその場を見ても全くわからなかった。
「…コツは飲むこと。一口目で噛み切ってしまって呑み込むんだ。
噛んでしまうと味が口に広がって食べれないからね。」
「コーヒー持ってきました。全員の分持ってきたんでよかったら飲んで下さい。」
(金木君にはまだ人と同じ食事を自然に食べるのはキツそう)
私がテーブルにコーヒーを置くと、みんなコーヒーを飲みにテーブルに集まってきたので近くの椅子に腰掛けていった。
金木だけは今だに床に座り込んでいるので背中を摩りながらテーブルのところまで手を貸して連れてきた。