第12章 『本性』
そんな私たちを気にもせず月山は私の血がついた手を舐めた。
「あぁ、ああっ!!なんという味だっ!!
これほどまでに芳醇で甘美な甘さを漂わせる物を食べたことがない!!」
「キモいな…。」
(食後じゃないし…食前だし)
背中をこちらに向け、私の血に身を震わせる月山はゆっくりとこちらに目を向けた。そして、次の標的にしたのは金木だ。
「月山ぁぁぁあ!!」
少しでも身じろげば襲われそうなほどの緊迫した中、西尾先輩が正面から月山に突っ込んでいった。
「西尾先輩!!」
(その体じゃ無理だ!!)
案の定、西尾先輩は月山に蹴り飛ばされた。
バキバキバキと音をたてて椅子に突っ込んだ。
金木も攻撃を仕掛けはするが、月山の実力には到底かなわない。
ーーこのままだとヤバイ…
私は首に下げていた呪具を取り出し、その先についている剣を模した針で指を傷つけた。
自傷行為は己の肉体を術の供物とすることの合図。
自身の霊力に加え、供物を足すことで術の効力を何倍にも引き上げる。
素早く九字刀印を切り、構えた。
「オン アビラウンケン」
詠唱と同時に溢れんばかりの霊力が迸る。
「何だいこれは!?」
突然、気配を強め力を漲らせる私に月山は少なからず動揺をみせた。
「これが君の美味しさの秘訣かい!!」
(あぁ、早く食べたいっっっ!!)
先ほどの順番なんてさして意味のないもののようで勢い良くこちらに赫子を向けてくる。
その瞳にはもう私しか映ってないようだ。
私は詠唱の続きを唱え、刀印を振りかざした。
私から放たれた目には見えない刃が月山を襲い、咄嗟に赫子でガードした月山を吹き飛ばした。
そして、月山が起き上がろうとしたところで
ガスッッ
「くっ」
突如として月山が呻き声を上げた。
「トーカちゃん!!」
(ナイス攻撃!!)
その原因は見事に隙を付き、不意打ちをかけたトーカだった。
それからはトーカと月山の攻防が始まった。