第12章 『本性』
「残念だがそれはできないよ。この女性は今宵の晩餐のスパイスなんだ‼︎金木君に最高の鮮度で食べさせてあげたいんだっ!!」
月山の考えていることが全くわからなかった。
自分が食べるのではなく、金木に食べさせる…?
「正確に言えば金木君が食べながら、金木君を食べたい!!そして、食べられる金木君を見て絶望する安部さんを食べたい!!」
両手を大きく広げ意味不明な発言をする月山に愕然とした。
「…狂ってる」
無意識にそう呟いていた。
「狂ってる?…心外だな。仮にそう感じたのなら…、金木君…そして安部さん。
そうさせているのは君たちなのだから、君たちが責任を取りたまえ。
…君たちは自分が美味しそうだということに気づいた方がいい」
「…そんなこと、とうの昔から知ってる。」
(どれだけ苦労してきたと…)
無責任なその言い草にふつふつと怒りが湧いてくる。
趣味の悪い考えのせいでどれだけ周りも迷惑してることか。
そう小さく吐き捨て、月山を睨みつけた。
その時、瞬間移動でもしたかのように目の前に月山が現れた。
咄嗟の事で反応が少し遅れた。
ガスッ!!ブヂィ…
「うぐっ…!」
(はや、い…!)
私は傷を抑えながら後ろに飛びのいた。
「陽菜ちゃん!!」
「大丈夫…」
油断をしてたわけでは無いのにこれだけの傷を負うことになるとは思わなかった…。
実力か……