第12章 『本性』
「ありがとう。」
「いえ、これぐらいしかできないですし。
そろそろ私は帰りますね?」
私はそう言って軽く頭を下げてから家へと帰った。
「錦君、大丈夫…?」
「う、あんま、近寄んな…!
正気をなくしそうなんだっ!!」
「でも!……何か食べないと錦君が…!」
「っ、いいから!」
(くっそ、肉喰わねぇと治らねぇっ!!)
コーヒーの空缶が大量に散らばる中、目の前のご馳走を食べないように葛藤している。
そのセリフを聞いた貴未さんは自分の肩口に付いた歯型に触れた。だが、肩口を曝け出すことはせず苦しむ西尾先輩を苦渋の表情で見た。
私が西尾先輩の家を訪れた日の次の日。
「あの、陽菜ちゃんだよね?」
貴未さんが大学まで私を訪ねて来た。