第3章 記憶の断片、笑顔の破片 金城白子 現代(学生時代有)切
俺は無我夢中で走った
いつも通る通学路なのに学校まで、とても遠くに感じる
早く着け、早く着けと心で叫んでも一向に近くはならない
何故、大切な瞬間はこんなにも遠くに感じるのか
風を切って走る
俺が見るのは目の前に映る景色だけ本当は、そんなものもどうでもいい
人、動物、草花、物…今、今だけは全てが邪魔だ
俺が見たいものは、たった一つ
それを探すため、見つけるだけのために足が動く
「白子!!」
そこには天火が立っていた
校門前には大勢の生徒
俺は肩で息をしながら、天火の両腕を掴んだ
「天火!一体何が!どういうことなんだ!」
これは俺の記憶
全てが闇に染まっていったその日
いくら叫んでも何も変わらないと知りながら
いつまでも友人に対して叫んだ
忘れることはないだろう決して
テレビ画面に映る砂嵐が見える
俺は安心した
これは全て夢だと
悪い悪い夢
そして俺は意識を失った
『神様は酷いよね。こんな悪夢を見させてさ…私、ずっと白子が好きなのにさ。嫌いになるなんて有り得ない。私、本当に本当に白子が好きなんだから!一緒にいれて幸せなの。大好き』
本当に酷いよね
君と俺を離れさせようとするなんて
どうして、こんな悪夢を見たんだろう
不安だったのかな…君があまりにも俺に頼ろうとしてくれなくて
強がって笑ってるから
『えー。頼ってるつもりなんだけどな…私、これ以上の甘え方知らないよ…。私にしては甘え過ぎだと思うんだけど、な。だって…本当は、……け……しか……んだ』
聞こえない、聞こえないよ
もっとはっきり言ってもらわないと、いつもみたいに明るく
ほら何でも言ってごらん
全て俺が受け止めるから
『白子!ありがとう!ずっとずっと大好きだから。ずっと…そして、ごめんね』
そう言った途端に彼女の姿は消えてなくなってしまった
最後に一言、謝罪して俺の前から消える
俺は、名前を呼んでは走った
終わりのない道
探して探して進んだけれど彼女は、いなくて
「琉璃!!!!」
気づけば天井が見える見慣れた部屋
ここは、と部屋を見回したところ
どうやら自分の部屋だということに気がついた
力が入らないまま天井を見つめる
悪い悪い夢を見ていたらしい
「白子。入るぞ」
「おい。本人の確認もなしに勝手に開けるな」
二人の友人が部屋に入って来る
俺は夢から覚めて両者に苦笑いした