第3章 記憶の断片、笑顔の破片 金城白子 現代(学生時代有)切
「いいのー?金城君。ここで問題を起こしても…成績優秀な君が、それに私を殴ったら退学かも?あるいは警察行き?」
嘲笑う姿が目の前に見える
そして、いつの間にか名前呼びではなくなっていた
そんな信じられないような事が一気に起きすぎて頭がついていかなくなり精神的に疲れてしまった
殴る気力もなくした俺は手を離すと下を向き、彼女の顔を見ないようにして、その場にへたり込んだ
「…じゃあね。金城君」
静かに言う彼女の言葉
その言い方が、あまりにも優しくて寂しくていつまでも俺の心に刻まれるものになる気がした
けれど、もう彼女を見る気力がない
見送ることのないまま君は屋上を出て行った
錆びた扉の音が響く、それと共に微かに聞こえた何か
『白子、白子…』
何故だか、そう聞こえた気がしたが俺が未だに呼んでほしいと願い過ぎて聞こえた幻聴だろう
もう一度、もう一度…呼んでほしい
彼女の声で
こう思う俺は相当な馬鹿なのだなと思いながらも忘れられない
どれだけ君を好きだったか、それが君には分かるかな
全てを失くしたような気持ちになったその日
人はいつか忘れていくものであるというが考えられない
今、この時はどうしても分からないだろう
「……」
暗い部屋、明かりもつけないこの部屋
趣味にも置いてある食べ物にも興味が湧かない
その上に寝ることが出来ず夜から、そのままだ
ただただ、ぼーっとしてしまい脳内は真っ白
何を考えたらいいのかも分からない
身体が動かず一心に天井に近い壁を見つめる
いっそのこと彼女を恨んで嫌ってしまおうかと考えたけれど、それは到底無理なことで
自分の性格を恨んだ
それに、よくよく思い出すと彼女は必死だった気がする
強がり、だったのかそれとも本心か
あんなに酷いことを言われたことはなかったので、やはり本当ではないかとそんなことばかりを考えていた時のこと
-ピロン
スマホのメール受信音が鳴る
ぼーっとしたまま見る気力がなくて放っておいたけれど暫らくして今度は着信音が部屋中に鳴り響く
それが、いつまでも鳴り止まないのでだんだんイライラしてきた俺はスマホを壊れそうな勢いで掴み画面に出てくる名前を見た
【天火】
そう書かれた友人の名前と相変わらず笑顔の彼が画面に映る
あまりにもしつこいので嫌々電話に出ることにした
「おい白子か!実は-」
止まっていた足が勝手に動いた