第3章 第三章
宗次郎さんが私の唇に唇をゆっくり寄せてくる。
私は目を閉じた。
唇に……この感触は……指?
目を開けたら宗次郎さんが私の唇に人差し指を当てて目の前で微笑んでいた。
「接吻はあなたが神谷道場の面々を始末するまでお預けです」
にこにこ微笑んで宗次郎さんが言った。
「もう……宗次郎さん……」
「はははっ可愛いですねぇ時音さんは」
可愛いのは宗次郎さんですよと言いたい。
頬が熱い。
「では、僕は今から志々雄さんの元へ向かいます。この拠点は部外者にとっては迷宮なので、護衛の人に頼んで拠点から出てください。一歩道を間違えると死んでしまいかねません。危ないですから、護衛の人と共に出入りなさってください」
「解りました」
「神谷道場の面々にやられたら必ず帰ってくること。僕が治療してさしあげますから」
「……ありがとうございます」
優しいなぁ……宗次郎さん……。
「あの……人を目の前にした時は常に刀に手を置いた方がいいですよ。刀を携えないなんてもってのほかです」
「あ……」
私は急いで刀を手に持った。
「では、行ってまいります」
宗次郎さんがにこにこ微笑んで私に会釈すると奥の扉へ入っていった。
……そう言えば私、拠点の中めっちゃ迷子になるんだった。
宗次郎さんが辿ってきたその抜け道を行くしかない。
「あの宗次郎さん」
私は宗次郎さんの後を追いかけた。
扉を開けると、宗次郎さんはもう居なかった。
抜け道の扉を開けて、
「宗次郎さん」
と呼びかけても、しんと静まっていて誰も居ない。
……こんなに速く……走れるんだ……。
今の一瞬で……この道の先を……。
私も扉を閉めて暗がりの道を走った。
私……宗次郎さんくらい強くなりたい!!!!!!!!
こんなに強くて足が速い人、見たことない。宗次郎さんのようになりたい。