第3章 第三章
拠点を出て、私達は比叡山を歩いた。
「志々雄さん、お酒買いましょうか?」
宗次郎さんが志々雄さんに訊く。
「そうだな。酒を飲みたい気分だ。新月村で乾杯しようぜ、由美」
「ありがとうございます、志々雄様」
「では、帰りにお酒買って帰ります。あの、それと、時音さんが神谷道場の面々を仕留めた時の報告のために時音さんにも新月村の拠点の場所をお教えした方が……」
「そうだな。時音、一度新月村について来い。宗次郎は神谷道場に行け」
「はい」
宗次郎さんが返事してから、
「くれぐれも志々雄さんに失礼の無いようになさってくださいね」
と私に囁いた。
「はい」
私は宗次郎さんを見つめて答えた。
「行っていいぜ宗次郎」
「はい、では行ってまいります」
宗次郎さんが微笑んで答えると、シュッと姿を消した。
速い……!!
「時音、時音は宗次郎に迷惑かけてねぇか?」
「えっ……」
いきなり何を言い出すの志々雄さん……。
迷惑……。
……かけてるかも……宗次郎さんに……迷惑……。
「かけてるかもしれません……」
私は少し項垂れた。
「宗の睡眠時間を奪うような事はするなよ?あいつには日中動き回ってもらわないとなんねぇからな」
「はい。解りました」
「ねぇ、昨夜は坊やと何したの?」
由美さんが私の方に振り向いて淑やかな笑顔で私に問いかけた。
「っ……」
頬が熱い。
由美さんに言わなきゃならないのかな……宗次郎さんと接吻したって……。宗次郎さんの恋人になったって……。
「何も……してません」
私はそう嘘をついた。
「まぁ、そうかしら?何かあったってあなたの顔に書いてあるわよ?」
由美さんがクスッと笑った。
一気に顔が熱くなった。
「まぁ、あなたが坊やに惚れているのなら、志々雄様に色目使わないのなら私としては有難い事よ」
由美さんがそう言って前を向いた。
「私……志々雄さんにも宗次郎さんにも迷惑かけないようにします!!もちろん由美さんにも迷惑かけないようにします!!精一杯頑張ります!!」
由美さんが私の方を見てクスッと微笑んだ。
「俺達の足を引っ張るなよ」
志々雄さんが前を向いたまま言った。
「はい!!!!!!!」