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宗次郎さんのそばに

第2章 第ニ章


「ありがとうございました」
宗次郎さんに水筒を返して、無理矢理笑顔を作ってみる。


「……時音さん……」
宗次郎さんが少し哀しそうな目で私を見つめる。


私を哀れんでいる?
私の作り笑顔がバレてるのかな……?


「時音さん……僕は……辛い気持ちとか、そういうのが麻痺していて、よく分からなくなっていますが……あなたまで僕のように毎日毎日笑顔で居る必要は無いんですよ?少なくとも僕は……今あなたが辛い気持ちで居る事は解るつもりです」


「えっ」


「僕はもう涙は出ませんがあなたは泣いてもいいのですよ?辛かったでしょう……?」


宗次郎さんの優しい言葉に私の笑顔は崩れて堰を切ったように涙が溢れ出してきた。


宗次郎さんがぐっと私を引き寄せ抱きしめてくれる。


私は宗次郎さんの胸で思いっきり泣いた。


「僕の前では泣いてもいいですが、志々雄さんの前では泣かないでくださいね」
宗次郎さんが優しい声で言う。


「あの人に弱さを見せてはいけません。あの人は弱い人が嫌いだ。絶対に弱みを見せないでください。でも僕の前では思いっきり素のあなたで構いません。どんなあなたも受け入れます」


「ありがとう……ございますっ宗次郎さん……っ」


宗次郎さんの優しさが嬉しい。
けれど、今の私は絶望の方が大きく心を巣食っていた。


お母さん……お父さん……後を追いたい。
私も死にたいよ。
お母さんとお父さんの元に行きたい!!!!!!!!!!!!!


でも……どうすればいいか……。
私は生と死を天秤にかけていた。
わずかに生きたい気持ちがあるのがなぜだか分からなかった。
宗次郎さんの腕の中では判断が鈍ってしまう。
宗次郎さんとの甘い時間が、死にたい気持ちに踏ん張りをきかせている……?


……何も……考えたくない。
今、全てを投げ出したい。考えることを放棄したい。
考えると頭がおかしくなる。
生きたいとか死にたいとか、そんなの考えることやめよう。
お母さんとお父さんの後を追いたいけど……それも考えるのやめよう。
少しだけ……現実逃避したい。
なんでもいい、逃げたい。
とにかく何かから逃げたい。
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