第6章 黒猫の正体
「ニャー」
奥の窓際に真っ白い猫がいた。
「黒じゃない……!」
と思ったが足元を見ると、白い粉が撒き散らされていた。
「…ミハエル。それで僕を騙せるとでも」
白い猫は姿を変えた。
「ちょっと遊んだだけですよ、トーマさま」
「気安く僕の名前を呼ばないでくれるかな」
今にでも争いが起きそうな、ピリピリとした空気が流れる。
「トーマさまが俺にしたことはまぁ、正当ちゃ正当ですよね。
だけど、俺は確信しましたよ、
吸血鬼さまはそんなどこのどいつかもわからない女のために
俺を消そうとするぐらい、馬鹿なやつだってことを」
昨日までのミハエルとは全く違う人物が話しているようだった。
声も低くて、言葉遣いも荒い。
私が戸惑っているとトーマが私の手を握った。
「耳を貸しちゃダメだ」
トーマはミハエルのことを睨んだままそう言った。
「あんたらにはここで消えてもらうよ」
ナイフを向けられる。
横から舌打ちする音がした。
見るとトーマの目が赤くなり、怒りに溢れていた。
「ミハエル、もっと前に消すべきだったよ」