第4章 秘密の部屋
あれは、まだ死者の都が栄えていた頃。
僕は自分が吸血鬼だなんて知らないで生きていた。
でも違和感は感じていた。
周りはどんどん大人になっていくのに自分は全く変わらなかった。
最初は、成長が止まったんだ、きっとそうだ。
そう言い聞かせてた。でもあるとき僕は聞いてしまった。
親が話しているところを。
「やっぱり、トーマに言うべきよ」
「しかし、いきなり吸血鬼だなんて言われたら動揺するだろ」
「でも、いつか言わないといけないんですよ…!」
そう、自分が吸血鬼であるということを…
ずっと人間だと思ってたから、辛かった。
家から抜け出し、どこへともなく走り続けた。
崖のしたにある洞窟にこもって僕は泣いた。
でもよく考えると、確かにそうかもしれない…と思った。
何度か何をしても喉の渇きが消えないことがあったから。
それはきっと人間の血を吸いたかったんだ、と。
気持ちを落ち着かせて、家へ戻った。
そして僕の目を見て、決意をしたように言った。
「トーマ、お前は吸血鬼だ」と
そしてもうひとつ…
「お前は、父さん達の本当の子供ではない」と言うことも。
親は人間だった。偶然見つけた僕を育ててくれていたらしい。
…自分が吸血鬼だと知ったときより辛かった。
本当の…血の繋がっている親ではないという事実に。
それからして、都は滅びた。
僕は近くにここを建てて、時々やってくる人間の血を飲んできた。
いつしかミハエルがそばにいてくれるよえになって、寂しくはなかった。