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ときめきメモリアルGirl's Side【佐伯瑛】

第1章 珊瑚礁ブレンド味


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「バカめ、もうこれは俺のもんだ」

手にして居た袋を抱きかかえる。

「じゃあ、はい」

俺に振り払われたその手を再び笑顔で差し出すお前。

「はぁ?何だよ、この手は。カレーパンは俺のもんだっつったろう?」

「違うよ。これはお代の請求の手です。特別におまけで五百円でいいよ」

「ほぉ、俺にお代の請求とは随分と身の程知らずだな?百年早い!」

今度は頭にチョップを見舞ってやる。

「…っ!もう、だから痛いってば」

片手でチョップされた辺りを撫でながらも、カレーパンを食べる事は止めないお前。

「ハハハハっ、夏海、お前、本当に食いしん坊だなぁ?」

「食いしん坊なんじゃないよ、このパンが美味しいだけですっ」

プイと膨れるお前の隣で、袋からパンを取り出す。
一緒に入っている缶コーヒーは、学校で売っている中で一番俺の好きな物だった。

見てないようでみてるんだよな、お前って。

「うん、美味い」

「でしょ?」

「お前が作った訳じゃないだろう?」

「作ってないけど並んで買って来たんだからね?」

偉いでしょ?とでも言うようなその態度にまた笑いそうになる。

「はいはい、ご苦労さま」

気のない素振りで答える俺。

本当はさ、もっと素直に「ありがとう」って言えたらな。
凄く感謝してるんだ、これでも。
お前が居てくれて良かったって。

ずっと気を張って優等生を演じてなきゃいけない学校での時間の中で、お前と居る時だけホッとしてるんだ。
けどさ、そんな事言ったらお前調子に乗るだろう?
だから言わない。
…いや、言えない。

「なぁ、夏海。どうして分かったんだ?ここ」
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