ときめきメモリアルGirl's Side【佐伯瑛】
第1章 珊瑚礁ブレンド味
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「はぁ…助かった」
壁にもたれて座り込みホッと一息。
お昼の約束をしている女子たちから、身を隠すように逃げてきた。
ちょっと前に見つけたんだ、ここ。
屋上に出る扉とは別の壁に、体育館で使うような椅子が立てかけられている場所があって。
その奥に扉がある事に気付いたのは最近の事。
そして数日前、人目を気にしながら、その扉を開けてみると、そこは倉庫になっていて。
今は使われてなさそうな学校の備品なんかが置いてあった。
ここなら隠れられる。
ふとそう思って、あの日以来再びここを訪れた。
「あっ…でも、腹減ったなぁ」
身を隠す事に一生懸命で、お昼を買う事も出来なかった事を思い出させるかのようにグーとなる。
今更昼食を買いにも出られないし、諦めて壁にもたれたまま目を閉じる。
ーギイ。
静かに扉の開く音がして、慌てて目を開ける。
「あっ、居た」
「あっ、お前…」
聞きなれた声に、一瞬硬くなった体の力が抜ける。
「へへっ、探したんだよ?佐伯くんの事」
遠慮もなく俺の隣に腰掛けるお前は、ハイと徐に俺の前に袋を差し出す。
「なっ、何だよ、これ?」
「お昼、まだでしょ?超熟カレーパン」
笑顔でそう答えたお前は、俺に袋を押し付けると、その中から一つ超熟カレーパンを取り出し食べ始める。
「俺に買って来たんじゃないのかよ?」
「うん、そうだよ。袋の中にあるよ、佐伯くんの分も。要らないなら食べちゃうからね」
片手で自分の分のカレーパンを頬張りながら、袋へと手を伸ばすお前の手をチョップで防ぐ。
「いっ、痛いよ!もう、意地悪するとあげないからね、カレーパン」