ときめきメモリアルGirl's Side【佐伯瑛】
第2章 未来の1ページ
じっと俺を見つめる涙目が、夏海によく似ている。
「ほら、陸、ミルクだぞ?お腹空いたろ?」
横抱きにしてミルクを口元へと持ってゆくと、小さな両手で哺乳瓶を抱えるようにミルクを飲む陸。
そんな姿に頬が緩むのを感じた。
「どうだ?お父さんの作ったミルクは美味かっただろ?」
陸の飲み終えた哺乳瓶をテーブルに置いて、陸を抱き上げてゲップをさせる。
陸の使うものが纏めて置いてあるそこには、「佐伯くんへ」と俺を名指しでメモが置かれていて。
ミルクを作る手順や、飲ませた後にゲップさせる…とか丁寧に記されてた。
「おばさん、確信犯だなぁ…」
呟きながらベッドの壁際で寝ているお前の隣りに陸を寝かせる。
そしてその陸を夏海と挟むみたいに俺もベッドに横になる。
ポンポンと陸の胸を叩くように。
こんな風にずっとお前と一緒に居たいよ、俺。
そんな願いを抱きながら、まどろみに誘われて行く。
ーピンポーン
玄関のチャイムの音に目を覚ます。
「ん?誰だ?」
半分寝ぼけたまま階段を下りてドアを開ける。
「どちらさまですか?」
「あら?あなた…もしかして佐伯くん?」
半分寝ぼけていたせいか、夏海を起こすのも忘れ人の家の玄関を勝手に開けた自分に驚くよりも先に、玄関先で出会った見知らぬ女性に「佐伯くん」と呼ばれた事に驚いてしまう。
誰なんだ?この人…。
「あの…えっと…どこかでお会いしましたか?」
「あっ、ごめんなさいね。私、夏海の叔母です。陸の母親。あなたの事は姉さんから聞いていたのよ、佐伯くん。思った通りの素敵な子ね」