• テキストサイズ

HQ短編‼︎

第5章 【オメガバース】 月島 影山 菅原


匂わせる描写多々あり R-15くらい

***

ぶつり、ぶつりと途切れては低くうなる彼の声を、外から聞こえてくる雨の音のように思った。
ときおりひきつるような声を、体育館を走る靴底の摩擦に感じた。
無機質なまじわりは彼に戻れない後悔と快楽を残して、彼女には深い傷跡を残して、わたしにはいったい何を残すだろう。
ああ、くやしい。わたしが女としての機能を持たないままこんな不可解でかなしいだけの行為を、なんと呼ぶだろう。
憎い。秀でて生まれたおのれが、劣って生まれた彼女が、わたしを選ばないこの男が。選べないこの男が。

短いようで永遠の交尾を、罪のようにかさねていく。

***

ひとしきり腰を振って果てさせて、影山が涙と汗とそれを枯れ果てさせたあとに、気を失うように地面になだれ込んだ。内腿を伝う不快感をすぐさまティッシュでぬぐう。

すぐ隣に、影山がくたばっていた。

「――ねー、かげやまぁ。どうして本気出して、抵抗しなかったわけ?」
「…………」
「妊(はら)まないとはいえ、避妊もさせず無理やり犯った女、本気で殴ってでも抵抗するわよ普通」

増して、好きな人の前で逆レイプだなんて、我慢ならないだろうに。わざとやったのはわたしだけれど。
わたしは最低な女で、最高の演者になれる。好きな男のために笑って最低なこともできる。
影山は、呆然としていた。何もできずに、何もわからずに。


「谷地さァん」


ガンッ!と、少し離れたあの部屋で、音がする。


「聞いてたでしょ?ご存知の通りわたしは影山が好きなの。影山飛雄を愛しているの。でもわたしもこいつもαで、しかも影山は貴方のことが好き。この言葉の、意味わかる?」

扉の前までおもむろに歩く。
小さく震えた声が聞こえる。

「わかんない……緋紗ちゃんのことなんて、もうわかんないよ」
「わたしのことなんてわからなくていい。わたしの言いたいことがわかるでしょう?」
「わかりたくない!!お願い、緋紗ちゃん、さっきうなじを噛んでくれなかったのはこういうことなの!?」

影山が己を取り戻してわたしを見た。私は笑う。嗤う。微笑う。
ああ、吐きそうだ。
わたしが何で、こんなかなしくてきれいなハッピーエンドに、花を添えているのだろう。
/ 51ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp