第5章 【オメガバース】 月島 影山 菅原
後輩マネ夢主(β?)×菅原(β)
午後5時ごろの昇降口は相変わらず人が少ない、と思いながらいちごミルクを啜る。のろのろ歩いていると、あの日のことが思い出された。
あたしがバレー部のマネージャーになったのは、熱烈な勧誘があったからといってもいい。
中学時代、脚を故障してからというもの、試合には出れず、有名校への推薦も消えたあたしを烏野に誘ったのは西谷だった。
「故障してもできることがある。だから、考えてみてほしい」。真剣な瞳でそう問われて、あたしはまだ自分がバレーを諦めきれていなかったことを悟ったのだった。
受験に問題なく受かったあたしとギリギリの西谷で、来る入学式、あたしは未だに迷っていた。
迷いない足取りでバレー部の体験に行く西谷のあとをついて行けずに、置いて行かれたままため息をついた時に、彼にあった。ある意味、あれが運のツキ。
『――君。もしかして、時縞緋紗さん?』
菅原孝支。スガさんとも呼ばれる、1つ上の先輩だった。
なんてことだろうか、彼は、バレーをしていたあたしを知っていた。相手が誰かわからず、とりあえず挨拶を交わしたあたしを、彼は半ば強引に体育館に連れて行ったのだった。
『君が膝を故障したの、聞いたよ。割と時縞、って名前は有名だったし』
『そう、でしたか』
『良かったら、ウチのマネージャーに会うだけでもどう?今、1人で頑張っているんだ』
そしてそのマネージャーつまり清水潔子先輩がむちゃくちゃ美しかった衝撃でしばらく動けなかったが、それはさておき。
あたしはなんとなく西谷や清水先輩や菅原先輩に流されて、いつの間にかマネージャーになることになっていた。