第5章 【オメガバース】 月島 影山 菅原
「えっ、薬飲んだ後も私なんかしたの⁉︎」
「なんかも何も……薬飲ませたら即寝たくせに、僕の服掴んで離さなかったのそっちじゃないですか。引き剥がそうと思ってもやたら力強いし」
「……重ね重ね誠に申し訳ございませんでした」
「本当ですよ」
よくよく見ればその白い肌、目の下に大きな隈がある。ごめんねごめんねと言い続けていると、ふぅと息を吐いた月島は、たるそうに眼鏡をとってあくびをした。突如幼くなった月島。眼鏡無しだとこう印象が変わるものなのか。
「……やっぱり、見つけたのが月島で良かった」
「……何でですか」
何でか。何でだろう。答えを言えずにいると、月島がベッドに腰を下ろした。座った姿が疲れている。眠たげな目を擦って後輩は言う。
ただし何気なく放ったその一言に、私は言おうとしたことを全部持って行かれた。
「僕は、好きな人とやるなら自己を保った状態でしたい。相手がΩだからって、本能のままに流されるままあんたを思いやらないでするなんて、嫌だ」
……それはどういう。
月島は言ってから一瞬でばあっと顔を真っ赤に染めた。口元を押さえているが言っちゃった言葉は戻ってこない、当たり前だ。
寝不足も度が過ぎるとこんなこと言っちゃうのか、とか考えながら、ヒートの時みたいに顔が熱くなるのがわかった。
しばらく二人して真っ赤になって無言になる。
口火を切ったのは月島だった。
「次ヒート来た時言って……その時は、……噛ませてください、うなじ」
今度はうっかりじゃない、彼の強い意志を持った言葉は跳ね続ける心臓を余計早まらせる。真っ赤になって頷いた私には、もう月島しか見えなかった。
- オメガバース 月島編 end -