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HQ短編‼︎

第5章 【オメガバース】 月島 影山 菅原


「ん……」
ぼうっとした頭で、眠りからの覚醒を知る。明るい。朝か、と思うと同時に、がばっと起き上がった。体の様子が普通だ。熱に浮かされたようなあの感じもない。

「……ヒートが、おさまってる」
「そりゃ、僕が薬飲ませましたから」

首だけを勢いよく声の方向へ向ける。「すっかり元気ですね。その忙しい動きが戻ってきてなによりです」なんて可愛げない口を叩くのは、意識を失う前に見た最後の人物。

「月島……」
「言っときますけど手は出してませんから。先輩も僕も流血してないと危なかったですね。特に僕なんか肉も抉れてほら」
「やめてぇえぇえええ‼︎見せようとしないでええええごめんなさぁぁあぁあいぃ‼︎‼︎」
「冗談です」

ベッドの上で土下座の勢い……って、ちょっと待て。

「……つかぬ事をお聞きしますが、このベッドというかこの家は」
「ああ、僕のです」
「ごっふ」
「ちょっと時縞先輩⁉︎……仕方ないデショ、あんたの家知りませんし、すぐに薬が必要だったんだから近い方行くのが普通じゃないですか」

ふん、と顔を逸らす月島。何でαなのに薬持ってんの、と聞くと兄がΩということだった。家族にΩがいて、自分はα……自制には、慣れていたのだろうか。
月島に対して暖かい気持ちが湧き上がる。
αの月島が本能に逆らって自分を助けてくれたのが、何よりもかえがたい。

「ごめんね、Ωだってこと隠してて。もしかしたら、公表しておいた方が対策が取りやすかったかも。……皆を信じて言えば良かった。月島も怪我もしなかっただろうし……本当、ごめんなさい」

「……怪我の事はもう過ぎたことデショ。多分、僕が先輩をおぶって全力疾走した時に王様とか先輩方とすれ違ったんで、本能でわかってますよあの人達。とにかく今日は学校休んだほうがいいです」

その瞳は柔らかくこちらを見下ろしている。月島の心遣いがとても嬉しい。

「ありがとうね、月島」
「言っときますけど、あの場で我慢出来たのかなり凄いことですよ。身体にまでそっちから触れといて、危機感とか無かったんですか」
「うん、それは凄く思った。いや、あれは、その。痛そうだったから……」
「ハァ⁉︎その判断であんたの方が痛い目見ますよ、全く」

こっちは一晩生殺しまで食らってるのに。そんな言葉が聞こえて目を剥く。
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