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HQ短編‼︎

第3章 月島蛍 雨天決行


「今日うちに誰もいないんで、好きに風呂入ってください。てか、あんたは今すぐ入んないと死にそう」
「お言葉に甘えさせていただきます……」

やっとの事で月島の家にたどり着いた。震えは寒さのせいだ、とは言ったが、誤魔化せていただろうか。フラフラの足取りでお風呂場まで歩こうとするが、力の入らない脚がそうはさせまいと脱力する。見かねて、重たい溜息を吐いた月島に支えられた。

「重症。一人で帰らせないで良かった」
「……ホントすみません」
「服は……無いに決まってるか。後で置いとくんで」
「ハイ……」

おかしい。さっきから月島が随分優しい。何だかむず痒いなぁと思いながら、月島家のお風呂場にお邪魔した。


湯船に浸かっているうちに、痺れたような冷たさが消えていた。ふぅ、と力の抜けた息をする。先ほどの雷による震えも寒さによる震えもなくなっていた。

後輩とはいえ男の家の風呂に入っているわけで、しかも二人きりな訳で。多少の危機感は覚えなくもないが、多分月島はそういったことを私にはしない、という絶対の自信があった。
たとえそんな気があっても、今日の私の様子を見て、自重するだろう。そういう、配慮のできたやつだ。

正直、月島の服を着て月島の家にいるという事を、私が耐えられるか。冷静になった所で頭に血液がのぼる。勢いで、顔面を湯船に潜らせた。
そんなタイミングで、ノックの音。曇りガラス一枚越しに月島が見える。

「はっハイ」
「ここに服置いとくんで」
「ありがとうございます……」
「なんでさっきから敬語なんですか」
「いや、特に理由はない」

まったく。と呆れたような呟きと、ちゃんとあったまってから上がってくださいねという珍しく直球な心配を残して、月島は脱衣所を出て行った。
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