• テキストサイズ

HQ短編‼︎

第2章 日向翔陽 グッバイ•アイザック


窓枠に切り取られた空に、悠々と雲が漂っている。
あの日の試合で、初めて全身に鳥肌が立つということを経験した。動悸が激しくなって、息が止まりそうになるほどの高揚を覚えた。

----その試合は、最初五分五分の戦いだった。
主将さんがドンマイ、と積極的にフォローし、西谷がカバーする。「凄い一年」らしいセッターのトスは怖いくらいに正確。けれどどうしても、相手の守りを崩せない。引き離せずに同点になる。
気がついたら、息をするのを忘れて魅入っていた。
試合はお互いの高校がワンセットずつ取っていた。 三セット目、これで負けたら終わり。

その時だった。急に、圧倒的な存在感を持って、コートに立つ人に気づく。
試合中、よく飛んでいた背の低い子。「凄い一年」の一人だった。
トスが上がる。田中が飛ぶ。けれど、違った。田中がニヤリと笑う。

…… LEDのライトで黒く体育館に影が落とされて、その小さい体が強く床を蹴る。彼の手に、狙い澄ましたボールが、吸い込まれる。
コンプレックスもなにも感じさせない。絶対的で決定的なジャンプ。ボールはブロックをぶち抜いて、床を叩く。

試合の後、ピースサインをしてくる西谷にピースサインをし返しながら、いつの間にか小さな一年生を見ていた。
我慢できなくて、西谷に名前を聞いてしまうほど、魅了された。
上のキャットウォークにあがってきた 西谷に、差し入れのガリガリ君を投げて、隣に並ぶ。

「おつかれ、西谷。……ねえ」
「おう、さんきゅ!なんだ?」
「あのオレンジ頭君の、名前なに」


「あーあいつか?日向翔陽だ!」


----「時縞、最近ぼーっとしてんじゃね?」
「んふふ、それはね田中、緋紗ったらさぁ」
「なにっ、 時縞がっ⁉︎」
「……なに言おうとしてるの自称超絶美形。この呼び方で定着させるよ。田中もこいつの言うこと信じないでね」
「えーっひどーい。あんた絶対ヒナタくんに恋しちゃってるじゃなーい」

「「……日向に、恋?」」

何故か西谷と声が重なった。
/ 51ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp