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HQ短編‼︎

第2章 日向翔陽 グッバイ•アイザック


「1,2,3」
ドラムのスティックでカウントを取る音。ピックを握り締める。4,の合図で、掻き鳴らす。
腹とふくらはぎに鳴り響くベースの重低音、頭ごと耳を貫いていくエレキギターの叫び、体に刻まれたドラムの足音。

----久々の弦に触れる。ピックが触れると、アコギは自在にその音色を変えた。
息を吸え。人間も楽器だ。……歌え。

届くように。


『--------』



「……?」
日向は、ロードワーク中に、いつもと違う何かに気づき、一人首を傾げた。何が違うのだろうか、風景か。暫く考えた後、あぁ、なんだ音楽か。と気づく。
掻き鳴らされるギターの音とドラムの音と、柔らかく力強い声。

「ん?どうした日向」
走りながら西谷に話しかけられ、日向はそわそわしながら答えた。なんだか、ドキドキするような、浮き足立つような、音色と歌声。

「西谷さん、なんか、音聞こえないですか。吹部のじゃない音楽」
「お、ほんとだ。久しぶりだな、この声聴くの。正式に活動し始めたのか」
「……?」

西谷は笑いながら、
「去年の文化祭の時に、バンド組んで歌ってた奴らだよ。歌ってんのは俺のクラスの奴」
「うぉおお、かっけええええ‼︎」

ぴょんぴょん飛ぶ日向に、西谷は馬鹿笑いして真似し始める。



(西谷が騒いでる……誰かと一緒に)

思いつつちらっと窓の外を伺うと、西谷と……

「----‼︎」

日向翔陽。

「おーーーーーい‼︎緋紗ーーーーーッッ‼︎‼︎」

元気だなぁと思いつつ、一瞬アコギを弾く手を止めてピースサインを送る。
「西谷うるさァァァァい‼︎‼︎」という主将さんらしき人の怒鳴り声が聞こえて笑いそうになりながら、窓からそっと目を逸らす。オレンジ色は、まだその場所にとどまっている。
ほら、日向走れ! と言われて、やっとその色は視界から消えた。
同時に歌い終わる。はぁ、と息を吐くと、ベースの花香(はなか)がにやっとこっちを見た。

「緋紗がおネツな一年くん、いたよね」
「えーうそうそッみたかったァァァァ」
とドラムの亜子(あこ)。
「もうあっち行っちゃったよ〜、つかそもそもあんたドラムだから見ようとしたら駄目じゃん」
一番まともな雪菜(ゆきな)。
「……うるさい」

彼のバレーが好きだ。……バレーが。
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