第14章 オマケページさやか篇 湘南
私には大学2年の彼がいる。
彼はサーファーになるのが夢で、毎朝のように海に行く。
今日は日曜日。朝ではなくもう少し遅い時間に行くと言うので私も一緒に行くことにした。
着いたのは彼と出逢ったあの場所。
だけど今日は何かが違う。彼はずっと黙っている。
早速波に乗り始めた彼を砂浜に座って見ていた。
風が冷たい。
海から上がった彼が隣に座る。
そしてやっと口を開いた。
「俺、海外行くことに決めたよ。」
「海外?」
「うん。本格的にプロになる勉強する。」
「いつから?」
「春になったら。」
「学校は?」
「辞める。」
「海外って…どこ?」
「オーストラリア。」
必要以上のことは話そうとしない。その空気に全てを悟る。
「私達、どうするの?」
「俺達まだ10代だ。俺にもさやかにも、まだまだ先がある。さやかにも夢があるだろうし、まだ高校生だし。ついて来いって言える余裕も、待ってろなんて無責任なことも言えない。」
私にはもう彼の答えがわかっていた。
「これが20代半ばとかならそう言ったと思う。でも、まだ恋よりも夢を大事にしたい時期だから…」
「じゃあ、お別れだね。」
「あぁ。ごめん…」
「これ以上一緒にいると別れが辛くなるから、私もう帰るね。」
「送ってくよ!」
「ううん。電車で帰る。じゃ。」
私は逃げるように彼に背を向けその場を去った。