第7章 巻き込まれた(?)GW
別荘に戻ると巻さんと鳥居さんのブーイングが待ち受けていた。
「ちょっと! どこ行ってたのよー!」
「そうよ、大変だったんだから!」
大変って?
「こーんなでっかい妖怪が襲って来てさ! 死ぬかと思った!」
「そうだよ! セキュリティなんてすぐに破られちゃってさ! お風呂場ボロボロだよね!」
思わずキョトンとしてしまうが、続く言葉に、あ、そうだった!と納得した。
うん。原作通り妖怪に襲われたらしい。
確か、馬の骨を被った馬頭丸が妖怪を率いて襲うんだっけ?
「あの、大丈夫だった?」
私は2人が怪我をしていないかどうか、心配なり声を掛ける。
すると巻さんは明るく笑ってグッと親指を立てた。
「それは平気! ゆらちゃんが追い払ってくれたのさ! あんがとねー、ゆらちゃん」
「いえ……」
ソファーに座って何か考え込んでいたゆらちゃんは、巻さんの声に顔を上げる。
何を考え込んでいたんだろう?
ふむ?
判らない。
と、突然、私のお腹がぐーきゅるると大きな音を鳴らした。
う、うわっ、恥ずかしっ!
「ご、ごめんっ! 何も食べてないから、お腹空いて……!」
言いわけをすると、広間に居た巻さん、鳥居さん、ゆらちゃん。そしてカナちゃん、氷麗ちゃんの5人が一斉に笑いだした。
ううっ、お腹よ、なんで今鳴る! 穴があったら入りたい……っっ!
鳴ったお腹を両手で押さえながら顔を赤くしていると、カナちゃんが何かを目の前に差し出して来た。
それは、チョコバーだった。
新幹線の中で20回以上お菓子賭けたのに、まだ残ってたんだ!?
吃驚してカナちゃんを見ると、カナちゃんはニコッと笑った。
そんなカナちゃんが天使に見える。
「私、まだ持ってるから、あげる」
「ありがとう! カナちゃん!」
チョコバーを受け取ると、巻さんと鳥居さんがカナちゃんに抱きついた。
「カナー、私達のはー?」
「お菓子、頂戴、ちょうだーい!」
「きゃっ! あげるから離れてー!」
「貰うまでは離さぬのじゃ~」
「もーっ」
そんな風にふざけ合う3人を見て、また皆笑い声を上げる。
そして、濃い一夜は過ぎて行った。