第7章 巻き込まれた(?)GW
どう答えようかと心の中で知恵を振り絞っていると、右手をガシッと掴まれた。
「判ったわ! 舞香ちゃんもあの方に助けて貰ったのね!」
「は、え?」
「私も小学生の頃助けて貰ったの! あの方に!」
「う、うん……」
「やっぱり、あの方ってすごいわよね!」
その勢いに思わず腰を引いてしまう。
「でも、なんでこんな山の中に居たのかしら?」
だが、私の様子を気にする様子もなく、私の右手を握ったまま、よく判らないわ、と眉を顰め首を傾げた。
と、カナちゃんが身体を動かしたからか、氷麗ちゃんが目を擦りながら目を覚ました。
「うーん……、若ぁ~……?」
「あ、及川さんが起きたみたい」
「……及川さん?」
私とカナちゃんは、寝ぼけ眼の氷麗ちゃんを覗き込んだ。
と、パチッと大きな目を開けるとガバっと起き上がった。そして大きな声を上げキョロキョロと周りを見回し出す。
「こ、ここどこですか!? 若、若は!?」
その慌てぶりにどう答えようかと言葉を捜していると、カナちゃんが先に口を開いた。
「及川さん。あの方が助けてくれたからもう大丈夫よ」
「ハッ!? い、家長、さんっ!? お、おほほ。私ったら、みっともないとこ見せちゃってごめんなさい」
なんだか自分の言動を思い出し、誤魔化しているみたいだ。目が泳いでいる。
きっと、奴良リクオ君の事を『若』って言ったのを誤魔化したいのだと思う。
カナちゃんは気付いてない。
と、言うか、氷麗ちゃんを抱きかかえていたので、移動が出来なかったカナちゃん。
氷麗ちゃんが起きたからには、これ以上ここに居ても仕方がない、と思い立った私は別荘に帰る事を提案した。
それに頷くカナちゃんと氷麗ちゃん。
しかし、氷麗ちゃんは帰る途中、何度も山頂の方角を見上げては、「若……」と呟いていた。
こんな可愛い子を心配させるなんて、罪な奴良リクオ君だ。
そう思いつつも、何故か胸がチクチクとした。
なんだろ? これ?