第3章 腹をくくりましょう
ギリギリ教室に辿り着くと席に着き、カバンを机に掛ける。
さっきのデジャブの感覚は、全部すっ飛んでいる。
はー、HRに間に合って良かった…
胸に手を当て安堵の息を、ほう、と溜息をついていると前方にある扉がガラリと横に開いた。
担任の先生だ!
気を引き締め背筋を伸ばす。
だが、入って来たのは、担任の先生ではなく、天然パーマの少年だった。
誰、あれ?
はて?と首を傾げる中、周りのクラスメイト達もザワザワと騒ぎだした。
そんなクラスメイト達の視線を一身に浴びながらも、気にする風でもなく、天然パーマの少年は教壇に上ると口を開いた。
「諸君! ボクは有志を集いにやってきた!」
有志?
「そう。ボクは今話題になっている妖怪が出る旧校舎への探索をしようと思っている!」
その言葉にざわめきが増す。その中、一人の男子が天然パーマの男の子へ問いかけた。
「おい、清継ー、ホントに妖怪なんていんのかよー」
すると即座に天然パーマの男の子は拳を握り強い口調で答える。
「もちろんいるとも!」
そして、陶酔するように過去の事を語り始めた。
小学校3年生の時にバス事故があり、暗闇の中凶暴な妖怪に襲われた所を、若き闇の支配者に救われたらしい。
ん? この話しって……あ、れ?
『ぬらりひょんの孫』の中の話しに出て来る事件とそっくりだ。
でも、そんなはずない。
あれは、漫画の中での出来事だ。現実に起こるわけがない。
そんなわけ、ない。
でも、この天然パーマの男の子が語った言葉は、『ぬらりひょんの孫』の話しにあまりに酷似しすぎている。
なんで?
頭の中をグルグルさせて悩んでいるといつの間にか天然パーマの男の子の話は終わり、遅れて来た先生に注意を受け、立ち去っていた。
そして、普通の授業が始まる。
だが、私の頭の中には、何故『ぬらりひょんの孫』と同じ事が起こっているのかという疑問でいっぱいで、授業の内容は頭に入って来なかった。