第3章 腹をくくりましょう
あ、穴があったら入りたい!
羞恥に顔が熱くなる。
でも、早く弁解しないと変な女の子と思われてしまう。
それは、ヤダ!
私の言葉に「「おひゃ?」」と首を傾げる2人に向かって、手を横に振った。
「ごめんっ、間違い! 気にしないで!」
「うん?」
カナちゃんは、何も気付かない様子でコクリと頷いた。
しかし、奴良リクオ君はプッと小さく吹き出す。
そして、あはは、と軽く笑いだした。
「有永さんって楽しい人だね」
それって、変な子確定のお言葉ですか!?
『ぬらりひょんの孫』の主人公ソックリさんにそう言われると、なんだか漫画の中の人物に直接呆れられた感じで、胸が痛い。
心の中で、ズズーンと落ち込んでいると、目の前の2人は別の話をし始めた。
「カナちゃん、今日はこっちの道から来たんだ?」
「そうよ。だって、怖いんだもの!」
「なんか怖いものってあったけ?」
クエスチョンマークを頭に浮かべさせながら首を傾げる奴良リクオ君。
そんな奴良リクオ君に後ろから、薄茶髪の少年が「よっ!」と声を掛けつつ、その肩に腕を回した。
「あ、島君。おはよー」
「なあなあ、奴良。アレやって来た?アレ」
「アレ?」
「アレだよ、アレ!」
「なーんてね。はい! 数学の宿題やって来たよ!」
「サンキュー! 奴良! それとさ、それとさ」
「うん。お昼のパンとジュースでしょ? まかせといて!」
「さっすが、奴良! 文字通り良い奴! 頼むな!」
……ん?
この会話。なんだか、デジャブを感じる。
どこかで聞いたって、言うか、このやり取りに覚えがあるって言うか……
どこだった? 思い出せ。思い出せ。自分。
うーん。と眉根を寄せて考え込んでいると、カナちゃんが不思議そうに覗き込んで来た。
「舞香ちゃん。どうしたの?」
「うん。今の会話、どこかで聞いた覚えが……」
「?」
と、校舎から、キーンコーンカーンコーンという鐘の音が聞こえて来た。
奴良リクオ君が弾かれたように、校舎の方角を見る。
「わっ、早く行かないと遅刻だ!」
「あ、本当! 走りましょ!」
「うん!」
私達3人は慌てて学校目指して駆け出した。